阪田清子展 対岸―循環する風景の画像

阪田清子「対岸について」(映像作品20分)/長篇詩集「新潟」より(詩:金時鐘)

阪田清子展 対岸―循環する風景

  • 作家名:SAKATA Kiyoko
  • 開催期間:【終了しました】2016年 8月23日(火)~10月2日(日)
  • 開館時間:9時~21時 会場:砂丘館ギャラリー(蔵)ほか
  • 定休日:月曜日(9/19は開館)、9/20・23振替休
  • 料金:観覧無料
  • 主催:砂丘館(新潟絵屋・新潟ビルサービス特定共同企業体) 後援:新潟日報社

 

<水と土の文化創造都市・市民プロジェクト2016>

想像しよう―海にかかる橋を 金時鐘の長篇詩集「新潟」をめぐって

 

在日の詩人 金時鐘(キム シジョン/1929‐)が1970年に発表した長篇詩集「新潟」が、半世紀の時を経て、新潟を、海を、列島と半島の境を、現代史を照射する。―

新潟初個展となる阪田清子が、長篇詩集「新潟」をモチーフとした新作インスタレーションを発表。見えない互いの『対岸』へと私たちを誘う。会期中には多数の関連イベントが開催されます。

 

作家プロフィール

阪田清子(さかた きよこ)

現代美術家。1972年新潟県生まれ。沖縄県立芸術大学大学院造形芸術研究科修了。主な展覧会に、「ニイガタ・クリエーション」新潟市美術館2014/新潟)、「アジアをつなぐー境界を生きる女たち1984-2012」(2012/福岡アジア美術館/沖縄県立博物館美術館/栃木県立美術館/三重県立美術館巡回展)、「VOCA展」(2010/上野の森美術館)、「沖縄プリズム1872-2008」(2008/東京国立近代美術館)、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2006」(2006/新潟松之山エリア)など。

 

 

例えば あなたと共に生きた場所について あるいは 共に過ごした時間について 無二のそれらがなぜ不在になったのかを わたしは知りたい 例えば ひとつの中に存在する相違なるものについて あるいは かつて存在したものが密やかに喪失していくことについて それらを語ることができないのは このうえもなく悲哀で残酷なこと 国家間や民族間を わたしとあなたの間を 拘束の煩悶を 小勢の隠蔽を わたしは拾い集める それらは不確かな立ち位置の集合体となり 儚くも力強く 幾通りもの答えを抱き 不在を希望へと 変えてくれることだろう  (ステイトメントより)

 

 日本海/東海と呼ばれる海は、大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国、日本、ロシア連邦に囲まれている。そのせいか新潟の海岸線を歩いていると、様々な言語の漂流物が岸辺へと打ち上げられている。風が強い荒波をあちらへこちらへと漂流を続けていたのだろう、どれも傷がひどい。そのひとつを手にとり、かつての所在地だった彼方の「対岸」について想いを巡らせたのは、2013年夏のことだった。傷を指でなぞりながらあたりを見回す。それは、誰から来たのか、誰に届くのか、宛の無い無数の手紙が散乱する光景にも思えた。そして、その長く険しい漂流の道のりに想像力を傾けてみる。

 今回の展覧会の作品の一部に、敬愛する金時鐘氏の長篇詩集新潟」を引用させて頂いている。詩の背景にある壮絶な体験を私などが全て理解することは皆無であり、浅はかな行為かもしれない。しかし、私にとって確実だったことは金時鐘氏の詩が傷という痛みとともに共同性を想起させ、言葉では表せない何かを受け取ったという感触だった。

 日本海/東海を交差しながら、「こちら」と「あちら」を差し替え、見えない互いの「対岸」について想像できないだろうか。この目前の海岸へ打ち上げられた宛の無い無数の手紙たちと、往復書簡を始めることはできないだろうか。

阪田清子

 

 

 

【会期中の催し】

◆ワークショップ「海水から塩を作る」 

講師:阪田清子・斎藤文夫

8月27日(土) 13:00-15:00

*今回の展示では海水から作られた塩の結晶が作品の素材で使われています。浜辺へ海水を汲みに行き、それを煮て、阪田さんと塩を作ります。

*ワークショップ後、斎藤文夫さん(郷土史家・写真家)から新潟の塩作りについてお話をお聞きします。

参加料:¥1,000 定員:20名  会場:砂丘館

申込み:電話・FAX・Eメールで砂丘館へ

☞ 詳細、チラシのダウンロードは こちら▶

※8月7日より受付開始 FAX・Eメールの方は催事名、氏名、電話番号、人数を併記して下さい

 

◆ギャラリートーク「対岸―制作風景と作品について」

お話:阪田清子 聞き手:大倉宏

8月28日(日)14:00-15:30

参加料:¥500 予約不要(直接会場へ)

会場:砂丘館

 

セミナー 金時鐘の「新潟」を新潟で読む

長篇詩集「新潟」は、在日朝鮮人の北朝鮮への「帰国事業」を日本が官民あげて支援した1950年代末より構想され、日本語による詩作が指弾され、北朝鮮への渡航が拒否された時代に書きつがれ、「発狂しなかったのが不思議だった」ほどの精神的苦境期に完成しながら、公表まで約10年を要した、複雑な構成をもつ叙事詩である。分断された祖国を隔てる国境という壁を突き抜く道を、日本という場所で、詩的想像力によって生み出そうとしたこの壮絶な試みを、詩の表題となった土地、新潟で読み解きます。

全4回の連続トーク。各回ごとのご参加も可能です。

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1/ ま新しい潟をもとめて――いま金時鐘を新潟で読むこと

 99日(金)19:00~20:30

 講師:細見和之(詩人・京都大学教授・大阪文学学校校長・ドイツ思想)

 

2/ 長篇詩集「新潟」と「帰国事業」の時代

 916日(金)19:00~20:30

 講師:森沢真理(新潟日報論説編集委員室長)

 

3/ 沖縄で読む「新潟」と作品が生まれるまで

 924日(土)15:00~16:30

 講師:阪田清子 聞き手:大倉宏

 

4/ ラウンドテーブルトーク「金時鐘の「新潟」を新潟で読む」

 927日(火)13:30~15:30

 お話:金時鐘+郭炯徳(カク・ヒョンドク 韓国語訳「新潟」翻訳者・韓国科学技術院KAIST教授)+阪田清子(美術家)+藤石貴代(新潟大学准教授・朝鮮近代文学)

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会場:砂丘館

参加料:1~3各回¥800 定員 20名/ 4¥1,000 定員 30

申込み:電話・FAX・Eメールで砂丘館へ

☞ 詳細、チラシのダウンロードは こちら

※8月7日より受付開始 FAX・Eメールの方は催事名、氏名、電話番号、人数を併記して下さい

 

 

金時鐘(キム シジョン)

詩人。1929年釜山生まれ。済州島で育つ。48年の済州島四・三事件を経て来日。50年頃から日本語による詩作を始め、53年詩誌『ヂンダレ』創刊。在日朝鮮人団体の文化関係の活動に関わるが、運動の路線転換以後、組織批判を受け組織運動を離れ、日本語による詩作を中心に、批評、講演などの活動を続ける。詩集に『地平線』(1955/ヂンダレ発行所)、『日本風土記』(1957/国文社)、長篇詩集『新潟』(1970/構造社)、『光州詩片』(1983/福武書店)、『原野の詩』(1991/立風書房)、『化石の夏』(1998/海風社)、『失くした季節』(2010/藤原書店 高見順賞受賞)など。2015年四・三事件の記憶をはじめて綴った自伝的回想記『朝鮮と日本に生きる』(2015/岩波書店)で大佛次郎賞を受賞。

【同時期開催の催しのご案内】

新潟国際情報大学・新潟日報社 連携 

金時鐘 文化講演会「詩について思うこと、考えること」 

2016925日(日)14:3016:00

会場:新潟国際情報大学 新潟中央キャンパス9階講堂(新潟市中央区上大川前通7)

定員:150名(先着順、入場券を送付) /聴講無料

協力:砂丘館

申込み:往復はがき、またはEメールで郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号、

 「金時鐘講演会」と明記し、下記の住所・アドレスまで送る。

951-8068 新潟市中央区上大川前通7番町1169 新潟国際情報大学中央キャンパスー宛

E-mail : chuo@nuis.ac.jp

申し込み締切: 912日(月)必着

問合せ:新潟国際情報大学エクステンションセンター TEL 025-227-7111

 

会場風景/PHOTO:Isamu MURAI

 

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