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2010年7月3日〜8月8日  ■主催:砂丘館(新潟絵屋・新潟ビルサービス特定共同企業体)


絵を聴く listen to the etching 白木ゆり展
 

白木ゆり(しらき ゆり)
1966年東京生まれ。89年女子美術大学芸術学部洋画(油絵)専攻卒。91年多摩美術大学造形学部版画研究生修了。個展はベイスギャラリー(東京 '93、'94、'00)、楓画廊(新潟 '01、'03、'05、'08)ほか多数。グループ展に現代日本美術展('99年「和歌山県立近代美術館」)、青島国際版画ビエンナーレ('00中華人民共和国「奨励賞」)、「特集・版―その多様な展開」('04東京国立近代美術館)、「KAMI(紙/神)―silence-action 現代日本の美術」('09ドイツ・ザクセン州立ドレスデン州立美術館)、「五月の風をゼリーにして持ってきてください」(銅版画五人展)('09ギャラリー憩ひ・佐賀)など。2005年銅版画集『SONIC 1992―2005』を楓画廊より刊行。パブリックコレクションは東京国立近代美術館、町田市立国際版画美術館、和歌山県立近代美術館、多摩美術大学美術館、青島市立美術館(中国)、山梨県立美術館、東京都世田谷区在住。

ギャラリートーク
●2010年7月4日
●ギャラリートーク
 「soundからripenessまで
      そして版を越えて」
●白木ゆり/聞き手:大倉宏

 

同時期開催
白木ゆり展
● 2010年7月2日〜11日
●画廊 Full Moon(企画 楓画廊)

 
「sound-8」1998年
エッチング、ドライポイント
「雨上がりの朝」紙.エンボス

 
新たな展開見せる「線の絵」

大倉宏(美術評論家)

 
 白木ゆりの「線の絵」を数年前、初めて見て、震えた。目ではなく、体が。
 表情豊かとは少し違う、しかし同じもののひとつとしてない、線、線、線。目から入ってくるのに、目に隠された秘密の抜け穴を通り、耳へ、肌へ、花へ、体内へ入り込み、動き始める。それは新潟の画家栗田宏の線の感触にも似ていたが、違う、独自の線だ。
 栗田の線が鉛筆でじかに刻まれる直截的なものであるのに対し、白木の線は「間接的」だ。銅版画という、版に刻んだ線が腐食や刷りという「間」を介して紙に接する方法で、「線の絵」に彼女が入り、広げていったことには、意味があったと言わなければならない。1990年代に注目されたシリーズ「sound」を制作したとき、彼女はしばしば「目を閉じて」描いた。
 なぜ閉じたのか、目を。白木が制作を始めた80、90年代はコミック、イラストレーション、映像、インターネットなど視覚メディアが広がり高度化した時代だ。出来上がった「見えるもの」に吸い込まれてしまう世界。そのただなかで、白木は目を閉じ、すでにある何かから、遠ざかるため、版画という「間」を選ぶ。「見えるもの」におおい尽くされた世界から、見ることを切り離し、線を「聞こう」とした。
 視覚を視覚から解き放った「sound」から、版に穴を開けるなど新たな展開を見せた「ripeness」シリーズなど近年の作品までを砂丘館で展示。そして、版にインクを盛らずに刷った「雨上がりの朝」=写真=などの最新作が画廊 Full Moonで紹介される。紙が紙に陥没し、盛り上がる画面は緩やかで、強いボディーブローのように、またしても私の「見る」を打ち、震わせる、体を。

2010年6月30日 新潟日報 掲載




2001年7月6日〜7月17日 楓画廊
白木ゆり銅版画展
2003年4月18日〜29日 楓画廊
白木ゆり新作展

あーとぴっくす(新潟日報)
「ダイナミックな運動感生む」
田代早苗(俳人)

2005年11月26日〜12月6日 楓画廊
白木ゆり新作展

あーとぴっくす(新潟日報)
「顫動するイメージに重み」
大倉宏(美術評論家)

2008年5月23日〜6月1日 楓画廊
白木ゆり展

あーとぴっくす(新潟日報)
「線だけで絵を成り立たせる」
大倉宏(美術評論家)

2009年2月6日〜16日 楓画廊
特集展示 白木ゆり90年代

あーとぴっくす(新潟日報)
「時間の積み重ね語る銅版画」
田代早苗(俳人)


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