2018.2/20-3/25 佐藤家の雛人形展示
日時:【終了しました】2018年 2月20日(火)~3月25日(日)
日時:【終了しました】2018年2月23日(金)~2018年4月1日(日)
絶望のやさしさと闇の明るさについて 砂丘館と新潟絵屋での回顧的展示のためにお借りしてきた絵を、冬の和室で広げた。久しぶりの大雪で砂丘館の庭は白い。 初期の作品「息子を抱く自画像」に、とても打たれる。そして、冬の夕暮れの窓のような青い風景。鏡や人形や経文などが浮遊する80~90年代の作風を経て、渡邊の絵は抽象に変化していくが、次々と絵を広げながら、あのとき感じた「闇」の感覚を、 変わらず自分が受け取ってきたことに気付く。 「息子を抱く自画像」は雄々しい。でも裸身のふたりは痩せていて、子は父にしが みつき、「何か」に立ち向かう顔で振り向く父の手は、保護するようにその子を抑えているが、目には無力を自覚するような諦念の影がただよう。襲いかかっているのが猛烈な寒気であり、嵐であり、猛獣であるなら、とても助かりそうにない。そのような絶望的ありようの暗さが、けれどこの絵に、どこか無限にやさしさを与えている。渡邊博の絵はそんなふうに人間の心をあたため、明るませてくる。変わらない。
大倉 宏(砂丘館館長)
◆上記は、「渡邊博展」チラシに掲載した文章からの抜粋です。 ▶チラシはこちらからご覧いただけます。