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2007年7月6日〜8月5日 ■主催:砂丘館(新潟絵屋・新潟ビルサービス特定共同企業体)


華雪 展「足もとのこと」
 

華雪(かせつ)
書家。1975年京都生まれ。1992年より個展を中心に活動を続ける。刊行物に『静物画』(2001 平凡社)『石の遊び』(2003 平凡社)『書の棲処』(2006 赤々舎)など。近年の個展に「雲と仮面と、雨粒の鳥」(2004 新潟絵屋)「書の棲処」(2006 一宮市立三岸節子記念美術館)「字の売店」(2006 colon books)「字のある部屋」(2006 finerefine銀座松坂屋店)「小さな出来事」(2006 Sewing Table Coffee/箱庭/shin-bi)「花知鳥待花」(2007 WALL)がある。また、ワークショップを積極的に開催し、現在、東京、大阪、京都の3会場で行う。2005年には原美術館でワークショップイベント「書と篆刻」を行う。ロゴ、シンボルマーク等のデザインワークも手がける。現在東京在住。
ライブパフォーマンス+ギャラリートーク
●2007年7月7日
●パフォーマンスとトーク
    :華雪
     大倉宏(砂丘館館長)

ワークショップ
●ワークショップ 
 「一文字の小さい判子を作る」
●2007年7月6日・8日
●講師 華雪

同時期開催
華雪展
●2007年7月12日〜20日
●新潟絵屋

 
未来芸術の可能性に出合う

吉田加南子(詩人・学習院大学教授)

 
 華雪の作品に出合うことは、書にとどまらず、広く、芸術の未来、未来の可能性に出合うことだ。
 京都生まれで、まだ三十代初めの若さだが、すでに十代から活動を開始。展示、ワークショップ、本の刊行など果敢な試みをつづけている。
 「書字」と彼女は言う。すなわち、書くことと、文字そのものと深く向きあうこと。当たり前のことのようだが、「書く」ことばかりが、どうしても先行しがちな書家のなかにあって、彼女のこの姿勢は評価されてよい。たとえば、2003年の個展での、幾つもの「風」の一字が作る、見る者との関係と、その微妙な変化。新潟絵屋展(2004年)での、「鳥」のさまざまな動き。作品が求めている、書家、そして見る者との、いきいきとした関わり。
 単に新しさを狙ったデザインではない。古典の世界に目を向け、文字の生まれてきた由縁、文字が生きてきた時間を熟知している。その上で、文字を生きる、ということを真摯に問うている。そして、そのような自分自身をも、鋭く見つめている。
 たとえば、パフォーマンスと言ってよいのであろう。会場の人前で書く行為。会場の空間や、他者たち、世界の気配や音、温度や光に身体ごとさらすのは、おのれを、書を、ひらくための、彼女にとって必然的な営為だ。後戻りのありえない、試み、とか仕草、というよりも、ほとんど、書字家としての生(せい)の形といえるだろう。
 昨年刊行の『書の棲処』に、彼女はこう記す。書き終えた字から「別の人の声が聞こえる」。「書き終えた字に問いかけられ」る、と。文字の形を考えることと、その文字との出合い、自分にとっての意味に思いをこらすこと―そうした過程と重なって、書は、他者と出会う場になるのだ。芸術が、そもそも、個を超えて他者と出会う共感の場であることは、言うまでもない。
 書字と真剣に向きあう人は、書の楽しみを存分に知っている人でもある。
 砂丘館で、また新潟絵屋で、彼女のものであり、私たち一人一人のものである「沙」や「鳥」が、文字が、その時間や匂いとともに、私たちを待っている。

2007年7月6日 新潟日報 掲載



砂丘館(旧日本銀行新潟支店長役宅)
〒951-8104 新潟市中央区西大畑町5218-1
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