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2007年8月24日〜9月24日 ■主催:砂丘館(新潟絵屋・新潟ビルサービス特定共同企業体)


赤沼潔展「いもののしごと」
 

赤沼 潔(あかぬま きよし)
造形作家。1956年宮城県生まれ。81年東京芸術大学工芸科卒、94年同大学院美術研究科修了。81年第15回現代美術選抜展佳作賞(東京都美術館ほか)。82年第16回現代美術選抜展(呉市立美術館ほか)。94年鋳金家協会創立90周年記念いものの形展(麻布工芸美術館ほか)、96年第2回目黒雅叙園アートプライズ展目黒雅叙園美術館賞(雅叙園美術館)。02〜05年第5、7、8回日韓現代美術交流展(仙台メディアテークほか)、05年表現のまなざし展(新潟県立近代美術館ギャラリー)。94〜2001年長岡造形大学助教授、01〜06年同大教授。現在東京芸術大学美術学部工芸科准教授。新潟県内では五泉市、長岡市立富曽亀小学校に作品設置。

ギャラリートーク
●2007年9月8日
●ギャラリートーク
 「いものの秘められた魅力」
●赤沼潔/聞き手:大倉宏

記念ライブイベント
●2007年9月2日
●出演:大樹
   (アコースティックギター)

同時期開催
Cast Our Now!
 長岡造形大学
  赤沼研究室の13年

●2007年9月2日〜10日
●新潟絵屋


 
赤沼潔展「いもののしごと」に寄せて
わき出る自然の響き

鎌田豊成(長岡造形大学学長)

 
 芸術家の仕事場というところは作家が自らと向き合うところであるが、「いもの」にあっては「神」と向き合う場でもある。
 「神」は火からの安全を守ってくれる存在であるだけではない。作家の技の一挙手一投足を見守るだけでなく心の中まで支配しようとする。ここで神にすべてを委ねてしまっては負けである。神に抗する強い意志と情熱をもって神と会話を交わすことができてはじめて、「いもの」ならではの「しごと」になるのではないか。「いもの」が入魂の芸術といわれる所以である。
 この度の「砂丘館」での赤沼潔展「いもののしごと」は、氏の近作と13年間の長岡での大学生活の期間の創作活動が中心となっているが、それらは作家としての最も良き自分を示すことが、若い才能を育てる最善の道だとの信念から生み出した「しごと」にちがいない。
 赤沼氏の「しごと」は硬く重い金属が、金属としての素材感や質量感を保ちながらも、重量から開放されて生命組織が成長するような動きを示す。これが赤沼氏が「火」の神業を得て彼の「いもの」にあたえた「魂」であろう。決して饒舌にならず静かでありながら多くを語りかける。無駄をそぎ落としながらも必要はすべて備えている。まるで「自然」がそうであるように。
 またアルミの鋳物片を連結して造形する一連の作品群は、鋳金というソリッドのアートからの脱出を図る意図が感じられる。あるときは羽根が空気を抱え込むような表情だったり、風に打たれる水面のさざ波の趣だったりという具合で、金属がどこまで空気と軽やかな戯れを演じることができるかの挑戦のようだ。
 造形作品は鑑賞するものにとって、視覚世界からさらに他感覚の世界にまで刺激を広げてくれるとき、いっそうの精神の逸楽をあたえてくれる。そういう意味で多くの優れた造形作品からは触覚はおろか、匂いや音楽が聴こえてくることが少なくない。赤沼氏の作品からも音楽が聴こえてくるが、それはメロディー、ハーモニー、リズムを備えたいわゆる音楽ではなくて、虫の声、小川のせせらぎといった自然音を音楽として味わう趣である。
 新潟の自然と風土がひとつの感性と才能を通して培った、優れた成果品として味わってみることができるのではないだろうか。
 今回の展覧会と並行して、赤沼氏が籍をおいた長岡造形大学の赤沼研究室の教え子たちの作品展示が「新潟絵屋」で同時期開催される。赤沼氏の作家としての遺伝子が、教育の場を通じて若い才能にどのように受け継がれているかを見るのも興味深い。

2007年8月21日 新潟日報 掲載



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