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高岡典男(たかおか のりお)
1950年東京生まれ。76年金沢美術工芸大学美術学科彫刻専攻卒業。92〜93年芸術家在外研修員として文化庁よりイタリアへ派遣。94年中原悌二郎賞優秀賞受賞・「新潟市野外彫刻大賞展」優秀賞受賞。オーストリア・イタリア・メキシコ・ドイツ・エジプト・ベトナムにおける国際彫刻シンポジウムへの招待多数。パブリックコレクションは新潟市立美術館、新潟市産業振興センター、旭川市立彫刻美術館、埼玉県立近代美術館、VALLE ROVETO(イタリア)、SULMONA美術館(イタリア)、日墨会館(メキシコ) など
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ギャラリートーク |
●2009年11月23日
●ギャラリートーク
「『言葉の棺』をめぐって」
●高岡典男/聞き手:大倉宏 |
同時期開催 |
高岡典男展
●2009年11月20日〜12月1日
●羊画廊 |
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「言葉の棺」2008年 アフリカ産黒御影石 62×164×54cm
視覚、触覚通じて哲学を問う
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川本嘉彦 |
不思議な姿の大きな御影石が置かれている。古い蔵の、歩くとねずみの鳴くような音できしむ厚板の床に。
その姿は何とは名指せないのだが、記憶のさまざまな層をゆるゆると刺激しつつ、特定のイメージの網ですくおうとすると、するりと逃れる皮膚のやわらかい「ぬめり」を持っている。見ているとつかまえたくなる。またつかもうとして、すり抜けられる。周囲をめぐると、そんなスリリングなドラマが目や体のなかに起こる。
「言葉の棺」=写真=と題された石は彫刻家高岡典男の新作。「言葉」は歴史の波にのまれ失われた言語、文明を指し、「棺」はそれらを再生の日まで内に包み保持する器の意味という。さまざまな国、文明の跡を旅して浮かんだイメージとのこと。高岡の魅力は硬い石から不思議に柔らかい表情、声を引き出す素材への感性と豊かな造形力に加え、視覚と触覚のことばを通じて彼が世界に投げかける問いの射程の深さと遠さにある。
「ハイブリッドな種」と題されたシリーズは金属と石を用い、異種の混ざり合いから新しいものが生まれつつある現代の、未来の文明に視線を投げかけたもの。新潟の2会場の展示で、この柔らかく美しいモノの哲学の道をゆっくり歩いてみたい。
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