ガイド地図利用案内 ギャラリー催し

 

2010年10月15日〜11月23日  ■主催:砂丘館(新潟絵屋・新潟ビルサービス特定共同企業体)


シリーズ 砂丘館を個人コレクションで飾る4
『週末はギャラリーめぐり』の30年 山本冬彦コレクション展
 

山本冬彦(やまもと ふゆひこ)

山本冬彦(やまもと ふゆひこ)
1948年石川県生まれ。現在放送大学学園理事。東京で会社勤務をしながら、30年近く毎週末銀座、京橋の画廊めぐりを続けている。個人コレクションの公開活動として個人や仲間のコレクション展も開催。美術マーケット拡大やアート普及のための活動、日頃アートに縁のないビジネスマン、OLのための講座や、初心者のための画廊めぐりツアーなどを実施。著書に『週末はギャラリーめぐり』(ちくま新書)。本年1月には東京の佐藤美術館で「〜サラリーマンコレクター30年の奇跡〜山本冬彦コレクション展」が開かれた。

ギャラリートーク
●2010年10月30日
●ギャラリートーク
 「コレクション―絵を見ることと
        買うことと…」
●山本冬彦/聞き手:大倉宏
ギャラリートーク 山本冬彦/聞き手:大倉宏

 

「週末はギャラリーめぐり」
「週末はギャラリーめぐり」
山本冬彦 著
出版社:筑摩書房
発行日:2009年8月

 

石踊紘一「花を売る娘」 石踊紘一「花を売る娘」
1977年 日本画
53.0×33.6cm
(山本さんが初めて購入した絵)
 
アート蒐集 楽しさ知って

山本冬彦(アートソムリエ)

 
 私は30数年前に自宅マンションに飾る為に日本画を1点購入したのをきっかけに毎週末のギャラリーめぐりとアート蒐集が趣味となったサラリーマン・コレクターです。
 当初は1人で画廊まわりを楽しみ、気にいった作品をコツコツと集めているだけでしたが、その間にサラリーマンで絵を集めている多くの人と知り合いました。そこで、サラリーマン・コレクターの会を立ち上げ、毎月講師の話を聞いたり、作家のアトリエや美術館訪問などを楽しんできました。
 同じころ、なじみの画廊さんからの提案で初めての個人コレクション展を行いました。コレクション展というと大コレクターや企業の所蔵品によるものが主流だった時代に一介のサラリーマンのコレクション展は珍しかったこともあり、その後毎年のように声がかかり、各地でコレクション展をするようになりました。
 日本人は美術館の入場者数ではここ数年世界1位を続けるほどアート好きの国民と言われますし、カルチャースクールなどでアートの実習や勉強をする人も相当な人数だと思います。ところが、美術品を買う人はお金持ちなど一部の人に限られていて普通の市民には無縁のものと思われています。そこで、一般の人にも絵を買う楽しみを伝えるためには個人コレクターがもっと世の中に発信すべきだと思うようになりました。しかし、絵を買うとなると画廊に行かなければいけないのですが、一般の人にとって画廊は敷居が高く、下手に行くと絵を買わされるということで敬遠されているというのが実態です。
 美術品は高額なものという先入観がありますが、若手作家や美大生の作品は一般の人でも十分買える価格です。画廊めぐりやアート蒐集はそれ自体が知的で楽しい趣味ですし、若い無名の作家にとって作品を買ってあげることが最大の作家支援になるということも知ってもらいたいと思っています。
 そんな訳で、数年前からユーザーの立場にたって画廊めぐりの楽しみ方やアート購入のアドバイスをするため「アートソムリエ」と名乗って活動をしています。具体的には、いろんなところで講演やギャラリーツアーを行っています。昨年は画廊を楽しむ入門書として、ちくま新書から、「週末はギャラリーめぐり」という本を出しました。また、30年来のコレクションの集大成として今年の1月に新宿の佐藤美術館でコレクション展を行いました。今回の新潟・砂丘館でのコレクション展はその一部による巡回展です。
 昨年出張で新潟へ来た時、砂丘館の大倉館長の案内で新潟絵屋、羊画廊、にいがた銀花、蔵織など数軒の画廊を回りました。画廊めぐりというと大都市限定の楽しみと思っていましたが、新潟にもこんなに多くの画廊があることには正直驚きました。新潟は美術館も充実していますし、越後妻有などのアートイベントも盛んですので、アートを購入し生活の中で楽しむという人も多いのではないかと思っています。今回のコレクション展をきっかけに画廊めぐりやアート蒐集の楽しみを多くの人に知ってもらえれば幸いと思っています。

2010年10月9日 新潟日報 掲載


山本冬彦コレクション展」リーフレット1 ユーザーからの美術

 山本さんと知り合ったのは何年前だろう。
 私が代表を勤めるNPO法人の画廊「新潟絵屋」に興味をもった山本さんからメールをいただいた。「見る人」の立場に立ち企画展を行うという絵屋のコンセプトに、共感するものを感じて下さったらしい。
 山本さんの美術との関わりも一貫して「見る人=鑑賞者」の立場で、それを「ユーザー(使い手)と山本さんは言う。自宅のマンションに飾る絵を欲しいと思ったことがコレクションのきっかけだったらしい言い方だ。
 絵は仰ぎ見る高尚な「芸術」であるより、購入して自宅に飾る(使う)モノ。そのような関わりが同時に作り手(作家)への支援になるという主張は、リンゴを食べる人がいてリンゴ生産者が成り立つというのと同じ、まっとうな論理なのに、これまであまり聞かなかった気がするのは、「見る側」から美術を語ることが、長くなおざりにされてきたゆえんだろう。
 新潟で絵屋や砂丘館など絵を飾るスペースを開いて、一番遠いと感じる人々が、20〜50代の現役サラリーマン男性。しかし山本さんは絵を見て、感じ、買うことが、会社人生にも有益と説く。自分を殺し歯車になるのではなく、自分を磨き、独自の発想を持つことが組織を活気づけるのだという。
 画廊で絵を見、どの絵に、画家に引かれるのか見極め、買い、飾って(使って)判断を再確認する。絵はそのように「見る〈独自の〉私」の鏡になる。新潟も画廊が増えた。30年で1,300点以上の絵持ちになった山本さんのコレクションを飾る(使った)砂丘館という古い家で「見る」ことのパワーに、仕事にもつながる不思議な意味に、できることなら新潟の男性サラリーマンの方々にも気づいてもらえないかと思う。

     大倉 宏
(砂丘館館長・美術評論家)


シリーズ「砂丘館を個人コレクションで飾る4
『週末はギャラリーめぐり』の30年
 山本冬彦コレクション展」リーフレットから
山本冬彦コレクション展」リーフレット2
山本冬彦コレクション展」リーフレット3


砂丘館(旧日本銀行新潟支店長役宅)
〒951-8104 新潟市中央区西大畑町5218-1
TEL & FAX 025-222-2676