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2010年10月1日〜11日 ■主催:砂丘館(新潟絵屋・新潟ビルサービス特定共同企業体)


特別展示 細川流盆石
 

  高山豊翠「かつらの巻 隠岐の海」
 
今に伝わる排除のジャンル
大倉宏(美術評論家)

 

 
 「明治美術協会」という、名の通り明治の民間美術団体には、多様なジャンルが集まっていた。そこから華道や書、篆刻などがもろもろはずされ、絵画彫刻を中心とする美術の新ジャンルが国家主導で編さんされ、明治40年スタートの文部省美術展(文展)で確定する。
 近年の「美術」を問う研究の進展で、その経緯がようやく見えやすくなってきた。
 2年ほど前、知人から、西堀のさるお宅に妙なものがあるので見に来てほしいと連絡があった。訪ねて見るとそれは黒塗りの盆、山の姿をした岩、はけやミニチュアのスコップめいた細々した道具類で、木版印刷らしい冊子があり、盆上に造る月夜や荒波などのさまざまな風景の絵があった。波は細かい白砂で造るのだろう。と想像できたのは枯山水の庭からの連想である。
 「盆石」という、私も、同行した砂丘館の「季節のしつらい教室」講師の坪井蓉子さんも知らなかったジャンルがあり、実は今も伝承されていることを、程なく知った。新潟にも教授される方があるという。坪井さんはそれが縁で細川流盆石を学び、東京の発表会にも参加するようになった。その延長で、昭和初期の日本家屋である砂丘館の和室各所を、盆石で飾る企画が実現した。
 新美術から排除されたジャンルの多くは、寺社やお屋敷の空間とのつながりが深かった。盆石も展覧会場ではなく、日本の家の片隅に置いて楽しむものだったのだろう。西堀のお宅も古い日本家屋で、亡くなられたご当主が趣味で楽しんでおられたらしい。
 文化施設となった古い日本の家で、「美術」から遠ざけられたジャンルのひとつを、新しい目で見つめ直してみたい。

2010年10月1日 新潟日報 掲載




砂丘館(旧日本銀行新潟支店長役宅)
〒951-8104 新潟市中央区西大畑町5218-1
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