ガイド地図利用案内 ギャラリー催し

 

2012年7月31日〜9月2日  ■主催:砂丘館(新潟絵屋・新潟ビルサービス特定共同企業体)

絵画風景 吉田淳治展
 


吉田淳治(よしだ じゅんじ)
1951年愛媛県宇和島市生まれ。1970〜76年東京で、以後は宇和島で制作。81年パリに1カ月滞在、イタリアに旅行。宇和島市立伊達博物館、べにばら画廊(宇和島)、松山三越、田都画廊(松山)、マエダ画廊、Gallery芽楽(名古屋)、現代画廊、紀伊國屋画廊、始弘画廊(東京)、ギャラリー小蕪亭(長野)、新潟絵屋、画廊Full Moon(新潟)などで個展。ほかグループ展多数。2011年に町立久万美術館(久万高原町)で「絵画のwaltz-吉田淳治展」が開催される。93年『JUNJI Y. WORKS 1986-90』(展開堂)、00年『JUNJI Y. WATERCOLOR』(三好企画) 、11年『風景を拾う The Gleaner』(創風社出版)を刊行。
吉田淳治HP http://junji-yoshida.webhop.info/

ギャラリートーク
●2012年8月4日
●ギャラリートーク
 吉田淳治/聞き手:大倉宏


関連イベント
●2012年8月3日
●HAKASE-SUNライブ

同時期開催
吉田淳治小品展
 2012年7月31日〜8月26日
 北書店 
 印象的な美しい光の色

大倉宏(美術評論家)

 
 目を覚ますと、淡い朱色の四角が浮いている。
 小窓にさす曙光が、壁に映っているのだと気付く。心にしみ入る光だ。
 宇和島に住む吉田淳治とは、美術評論家・洲之内徹の回想集を編んだ十数年前に知り合った。その後東京で個展を見た。
 油彩から水彩へ揺れ動きながら、絵が劇的に変容する様を目撃した。吉田の絵には線、形、絵肌という三つの独立した人格がいて、その3人が取っ組み合いのけんかを始めたようなはげしさに魅了された。新潟でも2度、水彩画展を開いてもらった。
 その後吉田は油彩に戻り、3人は長い延々と続く話し合いを始めたようだった。
 昨年、愛媛の久万美術館で吉田の回顧展があった。この数年の絵が独自の相貌を帯び始めていた。水彩時代の混沌が影をひそめ、初期の絵に似たシンプルな形があらわれてきていた。
 シンプルなのに、けれどシンプルではない。見えない混沌を秘めた気配が絵からにじみ、壁の曙光のようにしみてくる。そう書いて、吉田の近作のなんとも美しい色が、光の色なのだと気付く。美しい光だ。
 抽象とは、イメージや記号の散乱する現実世界から切り離された「画面」の中で、もうひとつの世界を作り上げる行為だろうか。輪郭(線)が形を控えめに支え、一見平坦に見え、さざなみのように動く絵肌。それらの協働が生み出す、深いバスの響きを思わせる色光から、今年61歳になる吉田が、そこで生まれ、描き続けてきた宇和島の、新潟とは違う空気や光の移ろいや波の音が、見えないが、感じられる。
 あわせて展示される石や漂流物によるオブジェは、この抽象画家の目が、現実の浜や、山や川原で、同じように生き生きと、ユーモラスに働いていたことを告げて、ほほえましい。

2012年7月31日 新潟日報 掲載 





30歳になろうとする頃、石拾いを始めた。良さそうな河原を探してあちこち走りまわったが、やがて気に入った場所は数か所に絞られた。…「石は石なのだ」と石が言っているような“力持ちの石”が見たい…全体に何の変哲もないのになぜか惚れ込んでしまう石というのがある。石の力がこちらに向かって膨らんでくるのが見えるようなことがあるのだ。その静かなパワーが僕のからだに入って来て、充足の時間を与えてくれ、後には無形の滋養の蓄積をも残してくれる。
吉田淳治『THE GREANER 風景を拾う』より
吉田淳治
『THE GREANER 風景を拾う』
創風社出版


砂丘館(旧日本銀行新潟支店長役宅)
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