「Spicilegium Amicitiae 3――私たちは、写真で、未来に、何を残せるのか?」この展覧会の隠されたキーワードは「夢」である。わたくしたちは、昨年の3月11日、「夢であってほしい!」と声を絞り出すしかないような災害、人災に見舞われた。復興を唱えながら、そのじつ、つまらぬ政党間の駆け引きを繰り返す政治、不便を承知してでも、この国に原発は要らないという声を聴こうともしない推進派の科学者、経済人や官僚や電力会社。例え夢のような理想であってもそれを目標として捉え、一歩一歩近づく努力をすぐ始めるべきだ。解決の難しい問題こそ少しでも理想的な方向へ、人間の創造力をフルに活用してベクトルの矢を向けなければならないと思う。砂丘館の玄関に、わたくしはあえて、ふるさとを飾る。それは厳しい現実と無限の夢だ。過去、新潟にも大きな震災があった。これを冷静にドキュメンタリーとして長いスパンで表現した写真を見てもらおう。親族を捉えた古写真から新潟はどう変化してきたのかをつぶさに観察していただきたい。そして、蔵のギャラリーに足を踏み入れ、夜韻の会会員による世界の都市、地方、現代の新潟、伝統、そして思想、人間、生命を感じていただきたい。
石井仁志(20世紀メディア評論、夜韻の会主宰)