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砂丘館 明治〜昭和初期の雛人形展示
《佐藤家のお雛さま》
佐藤(庄内屋)シン 古町九番町でかつて「庄内屋」という置屋(お茶屋)を営んでいた佐藤家所有のものです。明治時代の古い段飾りなどは、佐藤家の先祖で庄内屋で芸妓をしていた佐藤(庄内屋)シン(1873〜1938)が集めたものだと伝えられています。庄内屋シンは新潟花柳界が全盛だった明治中頃に新潟で1,2を争う売れっ子として活躍した芸妓で、大正天皇の叔父にあたる伯爵・柳原前光に見初められた美貌の持ち主としても知られています。
現在は、佐藤家12代目の方が受け継いでいますが、西堀前通1番町(裁判所近く)にあったご自宅の売却・引越しに伴い保管・展示が難しくなったため、砂丘館での展示を希望され、2007年より当館にてお預かりし、展示・公開を行っています。
佐藤家ではわずかな雛人形を除いて、ほとんどの古い雛人形(シンの段飾りなど)は戦後しばらくは飾られることがなく、土蔵にしまわれていましたが、現所有者の方が小学生のとき(1970年頃)、おばあさまから古いお雛さまがあるという話を聞き、興味をもって出していただくようお願いしたことがきっかけとなり、再び飾られるようになりました。
所有者の方はおばあさまから飾り方を教わり、高校生の頃までご自分で飾り付けをされていたそうです。その後ご実家を離れられたため、代わりに退職されたお母さまが毎年飾られるようになりました。1990年頃からはご自宅で口コミで訪れた一般客に公開もしていました。1月半ばから3月頃までの展示期間中、ご自宅では五部屋ほどを使って展示をし、多い年では200〜300人の見学客が訪れたそうです。
今回の展示は所有者の方にご協力いただき、ご自宅で飾っていたのに近い形で展示していただきました。お道具やお雛さま以外の人形も含めると500個ほど所有されていますが、今回はその中から代表的なものを展示していただきました。

佐藤家所有雛人形・解説 (※番号は会場案内図にに対応しています)

所有者の方のお話を元に簡単な解説にまとめました。(佐藤家のお雛さまはこれまで専門家の鑑定なども行われていないため、資料や口承の残っていないものは制作年代や由来、詳細が不明のものがありますが、ご了承下さい。)
 
七段飾り(京雛)
段飾りは明治時代(明治6年以降)のもので、古今雛(こきんびな)と呼ばれるものです。佐藤シンが購入したと伝えられています。お道具は雛人形に付いていたものではなく、後から別に購入したものが多いようです。
お道具は小さいながらも精巧に作られており、お椀や箪笥などに明治時代の特徴的な蒔絵が施されています(「牡丹唐草」という、お雛さまによく使われる模様です。
御車や箪笥の内側など、外から見えない部分にも蒔絵や細工があり、非常に丁寧に作られていることが伺われます。御車の扉や箪笥の引出しの開閉も可能で、簡略せず、実物をそのまま小さくしたように忠実に再現されています。
三人官女の左側の女性はお福さんの顔をしています。眉毛がないものや着物の袖が短い人形は、既婚者を表しています。
四段飾り(江戸雛)
こちらも佐藤シンが所有していたものです。冠などが@七段飾りと同じ形であるため、同じく明治時代のものと思われます。
@の京雛とこちらの江戸雛では、人形のお顔立ちや衛士の持ち物などが若干異なっています。
お道具には、お茶道具や囲碁・将棋の遊び道具、お化粧道具やお歯黒の道具などもあり、小物もここまできちんとそろっているのは珍しいです。細部まで行きとどいた繊細な細工に当時の職人の巧みな技が感じられます。蒔絵も@の京雛とはまた違った模様が施されています。
大きな内裏雛 四種
お内裏さまとお雛さまだけのものを「内裏雛(だいりびな)」と呼びます。
Bは現所有者の方のお母様が古道具屋で購入したもので、古いものではありますが、代々受け継がれたものではないそうです。制作年代は不明ですが、状態から見て明治以前のものもあるかもしれないとのことです(Bはおそらく江戸時代の享保雛)。
左甚五郎の京人形
左甚五郎という人形師が作った京人形があまりに良くできたため、ソロリソロリと歩き出した。甚五郎がハッと驚いてそれを見ている、という歌舞伎の演目を題材にしたものです。京人形の親指が立っているのが特徴。制作年は不明です。
五人囃子
こちらも現所有者の方のお母様が購入されたものです。音色の大きい順に左から並べられています。
紐のついた小さな鳥や動物
昔、魔よけ(お守り)として子どもの服の背筋などにつけてあげたものです。

這う子
見た目のとおり、「這う子」と書いて「ほうこ」と読みます。巾着状の物入れの形になっていて、一説ではお雛さまの原形ともいわれています。

小さな動物の人形
天皇家や公家の家でよく愛玩されていた人形で、絹糸を張り重ねて作られたものですが、今では誰も作り方を知らないといわれています。佐藤シンが大正天皇にゆかりのある伯爵のところへ嫁がれたため、いただいたのではないかと言われています。
子どもの人形
佐藤家の先祖が子どもの頃に遊んだもので、全てにガラスの目玉が入っています。よだれかけをしたものなどもあります。
小皿やお道具など
佐藤シンが集めたままごと道具などです。(一部、新しいものも、含まれています。)実際に紅(口紅)を入れて使われたと思われる小皿もあります。
鈴木家のお雛さま 五段飾り(昭和初期)
新潟中央区の鈴木家所有の段飾りです。
昭和2年(1927年)生まれの子どもの誕生に合わせて購入(よって昭和2年か3年頃のお雛さまかと思われます。)現在は娘・孫娘へと受け継がれています。
当時の金額で19円50銭で購入との記録あり
(※昭和8年当時の物価は米一升…25銭)
購入先は不明。特に修復はしておらず、購入当初のまま現存しています。
近年の華美なお雛さまと異なり品の良いお顔立ちで、落ち着いた佇まいが感じられます。


砂丘館(旧日本銀行新潟支店長役宅)
〒951-8104 新潟市中央区西大畑町5218-1
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