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2011年2月18日〜3月21日  ■主催:砂丘館(新潟絵屋・新潟ビルサービス特定共同企業体)


栗田宏 点 華雪
 
栗田宏
栗田 宏(くりた ひろし)
画家。1952年白根市生まれ。白根市役所に勤務し、在職中より絵を描き始める。後、退職し絵に専念。「生成」「気」「密」などのテーマで制作を続ける。84・85年現代画廊、2000・02・04年新潟絵屋、04・05・07・08・09・10年画廊Full Moon、07年砂丘館で個展。ほか新発田、豊栄、新潟、名古屋、山口などで個展。89年「新潟の絵画100年展」(新潟市美術館)、2000年「見えない境界 変貌するアジアの美術 光州ビエンナー レ2000(アジアセクション)日本巡回新潟展」(新潟県民
ャラリー)、04年「新潟の美術100人」(県立万代島美術館)、06年新潟の作家100人展(県立万代島美術館)に参加。
華雪
華雪(かせつ)
書家。1975年京都生まれ。1992年より個展を中心に活動を続ける。刊行物に『静物画』(2001 平凡社)『石の遊び』(2003 平凡社)『書の棲処』(2006 赤々舎)など。個展多数。新潟では新潟絵屋で04年「雲と仮面と、雨粒の鳥」、07年「上」、08年「刺心」、09年「刺心の跡」、砂丘館で07年「足もとのこと」、二宮家米蔵で09年「刺心」、10年「劇」、エフスタイルで10年「日」を開催。ワークショップも各地で開催。ロゴ、シンボルマーク等のデザインワークも手がける。現在東京在住。

ギャラリートーク
●2011年3月6日
●華雪ライブパフォーマンス
●ギャラリートーク
 栗田宏・華雪/聞き手:大倉宏
栗田宏 点 華雪
「栗田宏 点 華雪」展に寄せて
   生きることの苦しみ表現

大倉宏(美術評論家、砂丘館館長)

 
 2人展、3人展…グループ展という形は、個展の集合であることが多い。新潟市中央区西大畑町の砂丘館で3月21日まで開かれている画家栗田宏と書家華雪の2人展は、個展の合体でもなく、コラボレーションとも違う。
 きっかけは、4年前、華雪が書いた「点」と題された短い文章だった。
 その年、砂丘館では、春に栗田の、夏に華雪の展覧会をした。春の個展を夏の作家が見に、東京から来た。会場の下見ではなく、未知の栗田の絵を見たくて…というのを、珍しく思い、秋ころであったが、栗田の絵についてなにか書いてほしいと依頼し送られてきたのが「点」だった。栗田を見た日をつづった感想で、素直な文と読んだが、なぜだろう、そのままクリアファイルにしまって3年ほど忘れていた。それを昨年、探し物をしていて偶然見つけ読んだ。読み直して、思いついたのがこの2人展だった。
 栗田宏の絵は同じ新潟の画家でいうなら、佐藤哲三に匹敵する、力をもつ画家だと私は思っているから、最初「点」を、幾分もの足りず思ったことも思い出した。でもそれがいい。私が力んで栗田を紹介しても、抽象で、見る者に媚のない絵を多くの人は分からないと素通りする。初めて栗田の絵にふれた華雪の目を、素直な言葉を、通し、その中の数人でも栗田の絵の前に立ち止まるならと思った。
 栗田の絵は、4年前に展示したものから選び、華雪には新作を頼んだ。展示の当日届いた8点の書は顔、耳、目、うたうたう、行、ゆきふる、問、糸だった。なぜこれらの言葉なのか、華雪に問うことなく3日ほどかけて昭和初期のお屋敷の部屋部屋と蔵に2人の絵と書を並べた。
 並べることは、問い返されることだった。なぜ彼ら2人なのか? 問いに押され、惑うなかで、徐々に会場はできていった。
 「鉛筆は紙をへこませて跡を残すのだと思った。強い力ではないかもしれないけれども、紙に垂直に下ろされた力の集まりを、画面の中のひとつひとつの点から感じていた」
 蔵に至る部屋部屋には、「点」の抜粋を、あえて大きい活字で、栗田の絵の脇に置き、蔵の1階は栗田を主に、2階は華雪を並べた。容易に響き合うと思っていた絵と書は、実際に展示を始めるといろいろに齟齬を見せた。それらが触れ合う、けれど見え難い一点を見定めようと位置を探った。
 初日は寒く、あられが降り、来館者もまばらだった。その夜、林立する柱に張られた31枚の「耳」が、栗田宏の代表作「密」と向かい合う蔵の2階に佇んでいたとき、年も表現の方向も違うこの2人をつなぐ点は「苦しむことを生きる」だと、突然思った。そしてようやく、この2人展を企画したことが、自分のふに落ちてきた。
 栗田の絵も華雪の書も、決して見やすくはない。いずれの表現も、人が生きることの、そして描き、書く喜びの底にさえ潜む「苦しみ」に触れている。苦しみから逃れるのではなく、それを生きようとするとき、栗田の絵や華雪の書は、心に深くしみ入ってくる。4年前華雪が栗田に突かれ、そして今、あらためて私が2人に揺すられるのもそれゆえなのだ。

2011年2月25日 新潟日報 掲載




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