木下晋 絵本原画展「熊猫的故事」+はじめての旅の画像

木下晋 絵本原画展「熊猫的故事」+はじめての旅

  • 作家名:SUSUMU Kinoshita
  • 開催期間:【終了しました】2016年11月16日(水)~12月18日(日)
  • 開館時間:9時~21時
  • 定休日:月曜日、11/24振替休/会場:砂丘館ギャラリー(蔵)+一階全室<※一階和室会場は市民利用等で見学できない場合があります>
  • 料金:観覧無料
  • 主催:砂丘館

凝視の鉛筆画家・木下晋が一冊の絵本に描き出した中国四川省の野生のパンダは、日本人に刷り込まれたパンダの通俗的イメージをくつがえす。

昨年春、中国の二十一世紀出版社より刊行され大きな反響を呼んだ絵本『熊猫的故事』(文・唐亚明)と自らの少年時代を描いた絵本『はじめての旅』(福音館書店 二〇一三年)の原画ほかを展示。

 

作家プロフィール:

木下 晋(きのした すすむ)

1947 富山県富山市に生まれる 1963 自由美術協会展に最年少で初入選 1970 富山を離れ新潟に転居 1981 新潟県出湯温泉「石水亭」にて小林ハルに出会う 1983 小林ハルをモデルに制作開始 1999 東京大学工学部建築学科講師(’99~’08) 2001 武蔵野美術大学造形学部油絵科講師(’01~’08) 2003 新潟薬科大学講師(’03~’08) 2005 桜井哲夫をモデルに制作開始 2006 名古屋芸術大学特別客員教授 2009 金沢美術工芸大学大学院専任教授(’09~’14) 2013 武蔵野美術大学客員教授、紺綬褒章受章 2014 金沢美術工芸大学客員教授

おもな展覧会歴

1998「木下晋展 – 祈りの譜」(町立久万美術館/愛媛) 2004「六本木クロッシング展」(森美術館/東京)  2005「木下晋展 – 剥ぎ取られた闇」(朝日美術館/長野) 2006「木下晋展 – 浮かび上がる内面世界」(佐喜眞美術館/沖縄) 2007「ATTITUDE2007」(熊本市現代美術館/熊本) 2010「木下晋展」(福岡市美術館/福岡) 2012「木下晋展 祈りの心」(平塚市美術館ほか) 2013「木下晋展 – 生命の旅路」(原爆の図丸木美術館/埼玉、沖縄県立博物館・美術館/沖縄) 2014「木下晋絵本原画展」(田中一村記念美術館)

 

<会期中の催し>

◆ギャラリートーク 木下晋×明(『熊猫的故事』執筆者)

11月26日(土)14時~15時30分

聞き手 大倉 宏(砂丘館館長)、参加料 500円 予約不要 直接会場へ

 

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パンダって…あの白黒の姿は、人間から見ると「かわいい」となるけれども、他の動物には恐怖の対象なんです。先日、生命学者の中村桂子さんと対談したら、今、人間は地球の許容量の倍の人口があるそうなんですね。だからいろんな問題が起きている。だから、パンダを絶滅危惧種というけれども、本当は人間が絶滅危惧種なんだと。人間なんていつ滅んでもいいような生きものだけど、パンダをかわいいと思うのは、大自然がパンダを通して人間にまだ滅ぶなと言っているんではないかと、そんなことを考えているんですね。

木下晋・2013年12月丸木美術館での水沢勉との対談の発言(ブログ丸木美術館学芸員日誌より転載)

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『熊猫的故事』2015年 二十一世紀出版(中国)

 

 凝視の家が描くの世界  

 

木下晋は凝視の画家だ

瞽女(ごぜ)小林ハル、ハンセン氏病を負って生きた詩人桜井哲夫を描いた鉛筆画は「見ることのできない人間」をここまで見つめるのかという驚きを与えるとともに、この過剰な凝視が、そのような人々と向き合う彼の誠実な姿勢なのだと感じさせる。

その木下さんから「パンダの絵本」を制作中と聞いたときは、「えっ」と声が出た。日中国交回復時に日本に送られたパンダが日本中に巻き起こした熱狂が記憶にある。あれ以降すっかり親しまれたこの動物は、今では「かわいい」癒し系生き物の代表となった。なぜ、パンダを、木下さんが…?

依頼が中国から舞い込んだときは、さしもの木下さんも当惑したという。しかし招聘されて行った四川省で、野生のパンダを見て、イメージは変わった。あの白黒でたれ目の姿は、パンダが厳しい自然界を生き延びるためにまとった威嚇の姿だったのだ。そして生まれた絵本『熊猫的故事』は野生動物としてのパンダを描く珍しい一冊になった。と言っても科学絵本ではない。絵本的ストーリーも作られている。しかしここでも画家の凝視は生きている。

凝視とは必要以上に見つめることで、目に張り付いた既存のイメージを破ることだ。パンダを語りだすと、熱くなってとまらない木下さんを見つめていると、世界は本当に未知で満ちているのだと感じる。それを見まいとして、私たちは手垢のついたイメージで目をおおっているだけなのだ。

その木下さんが幼い頃、既知の場の外に母親の手で連れ出された体験を描いた絵本が『はじめての旅』。2冊の絵本原画と4メートルを越える鉛筆画の大作を展示する。砂丘館では2006年に開催した『ハルばあちゃんの手』原画展以来、10年ぶりの木下晋展になる。

大倉 宏(砂丘館館長)

『はじめての旅』2013年 福音館書店

 

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最終日には4mの大作「懺悔合掌図」を取り囲み、和室でのスペシャルライブを開催!

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【訂正】※チラシ掲載情報に誤りがありました。中国の「二十世紀出版社」が正しくは、「二十一世紀出版社」となります。関係各位に謹んでお詫び申し上げます。

☞ ブログ 「パンダの孤独 【木下晋絵本原画展】」