塩﨑貞夫展の画像

「女人午睡」 制作年不明 油彩、キャンバス

塩﨑貞夫展

  • 作家名:SADAO Shiozaki
  • 開催期間:【終了しました】2017年 2月15日(水)~3月20日(月・祝)
  • 開館時間:9時~21時
  • 定休日:月曜日(3/20は開館)/会場:砂丘館ギャラリー+一階全室(※一階和室会場は、市民利用等でご覧いただけない場合があります)
  • 料金:観覧無料
  • 主催:砂丘館

作家プロフィール

塩﨑貞夫(しおざき さだお)

1934年新潟県糸魚川市に生まれる。10代の頃療養生活を送る。1956年国画会に初入選、以後毎年出品。
63年国画会新人賞を受賞し会友となる。73年国画会を退会。77年から2005年まで文藝春秋画廊(東京)で隔年で個展。97年アートギャラリー環(東京)で個人コレクションによる清宮質文・塩﨑貞夫展。2007,08,09,10年 フォルム画廊(東京)で個展。04年から14年までギャラリー壹零參堂(鎌倉)で隔年
で個展。ほかアトリエ我廊(新潟)、南青山画廊(東京)、ギャラリー青雲(東京)、ギャラリートータク(東海市)で個展。

14年2月14日没。14,16年フォルム画廊で遺作展 が開催された。

「蛇蝎の棲む森」 2003年 油彩、キャンバス

 

ひとがひとを失うこと

そばにいたひとが、消える。いなくなる。死。
塩﨑貞夫の絵は、そのことをめぐっている。突堤でくだけてしぶきをあげる波の絵でさえも。

塩﨑は糸魚川の生まれで、新潟に来て画家としてのスタートを切り、のち東京で制作を続けた。
晩年になっても新潟にはよく来て、ふらりと砂丘館や新潟絵屋にあらわれ、話していくことが
あった。話はしばしば長くなった。ふしぎな抑揚で話す人だった。細い体に強い芯があるよう
で、その芯が声や口調にもとおっていた。私がうなずくと「そおっ」と叫ぶように声を高め、
何かが充填されたように話にいっそう熱がはいったのを思い出す。
そんな折に、今度こそ伺いますと私が約束した東京の玉川学園前のお宅で、残された絵を見、
これもきっと行きますと伝え、リストまで送っていただいていた安塚(上越市安塚区安塚)の
小学校の旧校舎の一室に保管された43点の油絵を見たのは、その人が消えてからのこと。

東京も安塚も、絵を見るというより、展示のための撮影・調査が主の訪問だったので、一気
に、流すように瞥見したという感じだった。しかしそのことで、絵と絵をつらぬくものが、く
っきり印象づけられた。
立つひと。横たわるひと。満開の桜。荒れた海。雪崩れた崖。山。墳丘。五重塔。磐座。
この世の存在のようで、そうでないような集うひとびと。黒ネクタ イの男。列記するとばらば
らに思えるそれらが、続けて見ていくと星座のよ うに連なり、それらを浮かび上がらせる死と
いう闇を、空を、指していた。

ほっそりと、かろうじて立っているかのようなよるべない風情のひとがいる。それをそのま
ま横にしたようなひとの絵が、横臥するひとが画面を明と暗に分かつ絵がある。その明暗――
生と死に、ともに属し、かつ属さないあわいの場所に桜が咲き、しぶきが散り、土が、岩がも
りあがり、塔が現れる。
なかでも白い空間に揺らぐように浮かび上がる黒い墳丘の絵が、印象深い。丘は箸墓古墳。
塩﨑が強い関心を持ち、幾度も描いたモチーフである。それを卑弥呼の墓とする説に興奮して
いたというが、画面は古代史のロマン的な言葉では解しきれない不透明な響きを発している。

墳墓とはなにか。日本史の本では豪族の墓と教えられ、権力の象徴と説明されたりもしたが、
その大きさは空間をあらわしていると、塩﨑の絵に気づかされる。そばにいたのに、消えたひと
の、まだそこにある体、生きてもいず死んでもいない存在が、咲き、しぶき、立ち上がりさえす
ることのできる空間を、ひとを失ったひとびとが作ろうとしたのだ。
死のモチーフについて訊かれると、塩﨑は若い頃にフォーレのレクイエムを聴いた感銘を語っ
たという。1973年まで出品した国画会では主に抽象的な絵を発表していたが、その最後の出品作
が「レクイエム」だった(国展出品作は破棄されたのか、数点を除いて残っていない)。
団体展を離れ、個展で発表するようになって、絵は具象になり、前記のモチーフをめぐる作品が
登場してくる。そのすべてがレクイエム(鎮魂歌)の音を奏でていることを画家ははっきりと自覚
していたに違いない。

クラシック音楽、古代史、そしておそらくは文学や旅など、さまざまなものに触発されつつも、
いつも同じ歌を歌おうとする、歌ってしまう画家として、塩﨑貞夫は画家としての後半生の約40
年を生きた。
その尋常ならざる持続を考えるとき、やはり塩﨑自身の実人生の、痛切な死にまつわる経験を
想像せずにはいられない。しかしそれを直接尋ねても、答えはなかったかも知れない。語れない、
語りきれないからこそ、描いたのであり、十分に描ききれないから、描き続けたのではなかった
だろうか。
そのようにして生まれた歌の山が、丘が、わたしたちの前にある。

大倉 宏(砂丘館館長)

 

「箸の墓」 1999年 油彩、キャンバス

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<会期中の催し>【終了しました

 ギャラリートーク「レクイエムの画家」

 3月4日(土)14:00~15:30
お話:塩﨑佳子(塩﨑貞夫夫人)/聞き手:大倉 宏(砂丘館館長)
参加料500円/申込み不要・直接会場へ

 

セミナー「箸の墓と卑弥呼の時代」

塩﨑貞夫が強い関心を寄せていた箸墓古墳と倭国の女王卑弥呼について、考古学の最新の
研究成果をもとにお話しをいただきます!

 3月3日(金)18:30~20:00
講師:橋本博文(新潟大学教授・考古学)
参加料500円/定員30名/要予約
*ご予約は【2月15日(水)より受付開始】
電話または、fax.E-mailにて、【催事名・氏名・電話番号・人数】を記載の上、砂丘館へお申込み下さい。

詳細・チラシダウンロード

 

 

<同時期開催>

「塩﨑貞夫展」

会期:3月2日(木)~10日(金) 11時~18時(最終日17時終了)/会期中無休
会場:新潟絵屋(新潟市中央区上大川前通10-1864)
tel.&fax. 025-222-6888 info@niigata-eya.jp

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会場風景

 

☞ブログ 「霧の正体【塩﨑貞夫展】」 

☞ブログ 「2017.3①塩﨑貞夫展」(新潟絵屋)