特別展示 横川美智子の素描から「死への床に横たわりて」の画像

特別展示 横川美智子の素描から「死への床に横たわりて」

  • 開催期間:【終了しました】2017年 4月11日(火)~23日(日)
  • 開館時間:9時~21時
  • 定休日:月曜日 会場:砂丘館ギャラリー(蔵)
  • 料金:観覧無料
  • 主催:砂丘館

~100歳をこえたひとりの人間の、人生の最期の時間を、4年にわたって見つめ、描き続けた横川美智子の素描は、人間のイメージをより豊かにする~

横川美智子はある敬愛する舞踏家の最晩年、その人が100歳になろうとしていた夏から、家族の了解を得て、すでに病臥していたその人のもとを訪ね、顔を描き出した。当初は月に1回、後に月に2回、3回、4回と訪ねて描いた。約4年。2010年にその人が亡くなった直後にも描いた。

その素描を見せられたとき、5年前に85歳で亡くなった母を思い出した。やはり最後の数年はベッドに寝たきりで、施設と病院で過ごしていたが、訪ねていくとよく頭を後ろにそらし、口を開けて眠っていた。黙って、その顔を見ていることが多かった。

素描の中の舞踏家も口を開けている。描き手は目に焦点をあてていることが多かったらしく、顔の下半分が描かれていないものもある。けれど描かれていないと、かえって強く、そこに大きく開けられた口を感じる。

叫ぶのでも、歌うのでもない、開かれた口は、空気を呼び込もうと精一杯ひらかれた身体の形でもある。人間が知的で成熟したコミュニケーションから離れ、動物的状態へ、さらには植物的なありように変化していく、あるいはそのような時間を生きる人間の姿だと、絵を見てしみじみと感じた。

それが描かれたり、写真に撮られたりすることがない(少ない)のは、人間というものに、私たちがかぶせてしまう、定型化された見方の作用があるのだろう。

私が母との時間を思い出したように、これらの素描から、記憶に存在しながら、封を滅多に解かれることのない時間が呼び覚まされる人は少なくないのではないだろうか。

これらを、高名な舞踏家の肖像としてではなく、名声からも、固有名詞からも離れていこうとするーー死へ向かう時間を生きる、人間の普遍的な姿を見つめた一個の記録として、見てもらいたいと考えた。

大倉 宏(砂丘館館長)

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<会期中の催し>

◆ 横川美智子 ギャラリートーク

4月15日(土)14:00~15:30
参加料500円/申込み不要・直接会場へ

※ギャラリー(蔵)で開催のため、見学の方は催事中、一部作品がご覧いただけない場合がございます。

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横川美智子(よこがわ みちこ)

1953年新潟県中蒲原郡村松町(現五泉市)生まれ。新潟大学教育学部特別書道学科卒。京都市立大学で聴講。武蔵野美術学園で日本画を学ぶ。日展や水彩鷺草会展などの団体展、グループ展に出品のほか、ギャラリー玉屋(銀座)、さくらんど会館(村松)、新潟絵屋などでの個展でも発表。一時期師事した敬愛する舞踏家大野一雄の最晩年を描いた398枚の素描と大野から聞いた言葉を収録した『大野一雄最期の四年 横川美智子素描日記』(知道出版)を2015年に刊行。2016年藤屋画廊(銀座)で出版記念の素描展が開催された(2018年若山美術館(銀座)でも開催予定)。大野一雄舞踏研究所には現在も通っている。

*横川美智子が舞踏家大野一雄の最晩年を描いた素描398点から30点と近作の墨絵を展示します。