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新潟市財産活用課のミスから生じたBSNニュースの誤報道について(経緯)

12月16日のBSNテレビのニュースに突然砂丘館の画像が映し出され、驚かれた方もあると思います。

このニュースが「誤報道」であり、その原因が新潟市が作成した資料のケアレスミスにあったことが判明しました。

なぜ、このような誤報道がなされたのか経緯をお伝えいたします。

ニュースの内容は

新潟市は行財政改革の一つとして、コミュニティ施設や図書館、文化施設など私たちに身近な施設について統廃合が必要かどうか、3年かけてチェックすることを16日に決め、市議会の委員会に市内にある公共施設の見直し方針に関する素案を示した。新潟市は10年間でおよそ41億円の支出削減を目指すとしているが、その柱の一つが公共施設の見直し。素案では、コストの割に利用が少ないとして統廃合の対象となりえる施設も公表されたが、その1つが新潟市中央区にある旧日本銀行新潟支店長役宅・通称「砂丘館」。昨年度は来館者が、のべ1万6000人と過去最高となったが「高コスト・低利用」の施設として挙げられ、無料で展示や催しも公開されているが、利用が少ないとされた。他にも、ホールやスポーツ施設、ひまわりクラブ、小中学校など、17種類の公共施設で統廃合を検討するとしている。

(BSNニュース: 2019年12月16日(月) 17:51)

というもの。

画面には休館日の砂丘館の正面と、秋に庭を来館者が見学している映像が流されました。

<来館者が、のべ1万6000人と過去最高となったが「高コスト・低利用」とされた>という表現に首を傾げられた方もあったと思います。

砂丘館の担当課である中央区地域課に問い合わせたところ、その根拠になったのが平成27~29年度の「新潟市財産白書」という書類だと返答を得ました。

さっそくその資料を閲覧したところ、正式名称の「旧日本銀行新潟支店長役宅」名で、ほか20あまりの「文化施設」とともに、予算、入館者などのデータが記載されているページを発見しました。「利用コスト」は利用者(入館者)一人あたりの市の支出を示す数字で、利用の程度は一日あたりの「平均入館者数」で示されている表でした。判定のために、同じ表内の施設間で比較された「偏差値」が併記され、問い合わせの結果、平均(偏差値50)以下が「高コスト」「低利用」とされていたことがわかりました。

砂丘館の数字をみると「コスト」の偏差値は56.3(平成27年度白書)、55.4(平成28年度白書)、55.5(平成29年度白書)です。

つまり、いずれの年度でも高コストとは言えず、3年度を平均しても「高コスト」とは判定できえないデータ内容になっていることがわかりました。(ちなみに利用面の偏差値は46.8、46.3、46.2で平均以下でした…ただし、これは施設の規模は反映していない数字による比較なので、データとしての価値には疑問が残ります。)

どう考えても「高コスト」と判定される言われはないと思い、その点を財産活用課に直に電話で連絡し、問いただしたところ、埒のあかない感じでした。

数時間後、同課の職員2名が砂丘館を訪ねてこられ、資料にミスがあったと告げられました。

どのようなミスであったのかを、実際の表で明らかにします。

これがBSNがニュース報道の根拠にしたと思われる「素案」(「新潟市公共施設の種類ごとの配置方針(素案)」以下「素案」)中の「旧日本銀行新潟支店長役宅」(=「砂丘館」)の名称が記された表です。

これを見ると確かに斜体網掛けで書かれた4つの施設が「高コスト・低利用」だと判断できます。

「ミス」は次ようなものでした。

次の表を見てください。

財産活用課職員がこれが正しい表でしたと、持参されたものです。

表の上に「(ハード)耐震化対応率50%以下」という注記が追加され、「旧日本銀行新潟支店長役宅」(=「砂丘館」)と旧笹川家住宅と旧篠原幸三郎家住宅に(ハード)という語句が追加されています。

この3施設は「高コスト・低利用」なのではなく、耐震基準が変更になって以後、それに対応する工事がまだ行われていない施設であるということだったとのこと。

「(ハード)耐震化対応率50%以下」の注記を書き落とし、「高コスト・低利用」と判定された施設と「耐震化対応率50%以下」の施設を同じ斜体・網掛けで表示してしまったため、砂丘館が「高コスト・低利用」の施設であると、誤った情報を伝えるものになってしまったということでした。

ただ、この表では「斜体は高コスト・低利用の施設」と書かれているため、砂丘館は「高コスト・低利用」であり、かつ「耐震化対応率50%以下」の施設でもあるように見えます。

その点を後刻、財産活用課に連絡したところ、12月23日からは、ホームページ上で、次のように修整しますと連絡がありました。

この表だと、はっきり「高コスト・低利用」と判定された施設と「耐震化対応率50%以下」の施設の混同は生じなくなっています。

BSNの報道も、現資料である「新潟市財産白書」の表で確認すれば、私が感じたのと同じ疑問は抱くことができたはずです。また「財産白書」を参照せずとも、「素案」の「文化財的施設」の表に続く記述部分に「施設の見直し」という項があり、そこに「  建物自体に文化財的価値があることから、必要な修理・整備工事を行い、保存・活用 を進めます。/  活用面ではまちづくりとの連携やインバウンドを含めた観光面での活用が期待されて おり、特色ある区づくり事業や民間と連携したイベント等を開催し、PRを強化する 等で施設の利用需要喚起につなげます」と記載されているのを読めば、砂丘館を含む「文化財的施設」全体が、「統廃合の対象となりえる施設」と素案においては見なされていないことも確認できたはずなので、そこをしっかり読み込めていれば、誤報道は防げたはずです。

このように見てくると、ミスを犯した新潟市(財産活用課)と、公表された資料を斜め読みして安易に報道したBSNの双方に、今回の誤報道の責任があると思います。

 

「過去最高の入館者を記録した施設」が「高コスト・低利用」であると報道されれば、それを鵜呑みにし、その入館者数でさえ妥当と思えない大きな予算が投じられている施設なのだろうと錯覚した視聴者も多かったのではないかと思われます。

その誤解を解くために、「新潟市財産白書」をもとに独自に作成した表を示します。

「新潟市公共施設の種類ごとの配置方針(素案)」の同じ表で、「高コスト・低利用」でなく「耐震化対応率50%以下」でもない施設とされた施設で、規模的に近い旧小澤家住宅の数字もあわせて示しました。ここでは両施設の開館時間の違いも数字に反映させています。

開館時間1時間に対する新潟市が負担するコスト、開館時間1時間、施設面積1㎡あたりのコストも独自に算出してあります。

なお「純経費」は新潟市の支出から収入を差し引いた金額。「利用コスト」(「財産白書」が使用している言い方で、適切な言葉であるかどうかは疑問)はそれを年間利用者(入館者)数で割った数字。「偏差値」は施設の規模、開館時間の違いなどの反映されていない「財産白書」の数字を転記しています。

比較は実際に表で見ていただければと思います。

 

 

今後、今回の報道によって広がったと想像される砂丘館についての誤ったイメージの修正を求める働きかけを行っていく考えです。

働きかけに対するBSNと新潟市の対応が、どのようなものであったかも、改めて、このホームページ上でお知らせしたいと思います。

2019年12月22日

文責・大倉宏(砂丘館館長)

今回の誤報道のもととなった資料は新潟市のホームページで閲覧できます。

下記をご覧ください。

「新潟市公共施設の種類ごとの配置方針」

「新潟市財産白書」