「洲之内徹と現代画廊」と2人の画家 前期:佐藤清三郎/後期:川北英司の画像

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「洲之内徹と現代画廊」と2人の画家 前期:佐藤清三郎/後期:川北英司

  • 作家名:SATHO Seizaburo / KAWAKITA Eiji
  • 開催期間:【終了しました】2014年 前期:佐藤清三郎 4月12日(土)~5月11日(日)/後期:川北英司 5月14日(水)~6月28日(日)
  • 開館時間:9時~21時
  • 定休日:月曜日(5/5は開館)、4/30・5/7・8振替休
  • 料金:観覧無料
  • 主催:砂丘館

作家プロフィール

 

佐藤清三郎(さとう せいざぶろう)

1911年新潟市西堀前通2番町に生まれ。新潟貯蓄銀行に勤めながら独学で絵を描き35、38年神戸清の名で県展入選。東京に行き三芳悌吉に教示を請う。新潟では小熊金之助、佐藤哲三に批評を求める。42年結婚。45年応召し4月横須賀で戦病死(33歳)。6月30日遺児清子誕生。死後油絵、堀端や信濃川縁、働く人々、自画像などの素描多数が残される。46年白根市の民衆文庫、72年新発田の田部直枝(清三郎の同僚で友人)宅、73年東京銀座の現代画廊、75・85年新発田の画廊たべ、78年新潟のアトリエ画廊で遺作展。87年「夭折の画家たち展」(新潟市美術館)に作品展示。92年遺作画集が刊行され新発田、新潟、東京で遺作展。2000年新潟絵屋、2004年旧日本銀行新潟支店長役宅(現砂丘館)でも遺作展が開かれた。

 

川北英司(かわきた えいじ)

1912年龍ケ崎市に生まれる。川端画学校、帝国美術学校(現武蔵野美大)に学ぶ。在学中より宮坂勝に師事。36年国画会展初入選。20代後半より病気療養生活に入り、帰郷。68年頃より画作を再開。78~86年愛宕山画廊、現代画廊ほかで多数個展を開く。89年没。94年に龍ケ崎で遺作展が開催される。96年遺作画集が刊行され、龍ケ崎で記念展。2000年水戸で遺作展。01年新潟絵屋で遺作素描展。

 

 

洲之内徹が、気づこうとしていたこと

大倉宏

 

美術随筆「気まぐれ美術館」シリーズで知られる評論家・画廊主の洲之内徹の昨年は生誕100年。27年前、洲之内徹が亡くなる一週間前に偶然親しく話した。田畑あきら子のこと、誰だかのオートバイのこと、藤牧義夫、佐藤哲三のことなど。藤牧については友人だったとされるある版画家の名を挙げ、彼がもっと黙ると、いろいろなことが見えてくると思うと言った。近年刊行された、藤牧について驚くべき事実を告げる本を読み、洲之内徹もそれに気づこうとしていたのではないかと感じた。

新潟の画家佐藤清三郎は「気まぐれ美術館」の連載初回に取り上げられた。そこで同じ新潟県の新発田の画家佐藤哲三と比較し、対象に田園のないことを訝しみ、清三郎は「都市の画家」であって、彼の絵に出てくる湿地の風景も郊外の一部と見るべきではないかと書いた。その時も洲之内はあることに気づきかけていたのではないかと思う。それは新潟という町の「非田園的性格」のことだ。

近年新潟市で「水と土の芸術祭」があった。初回では新潟の歴史が「水との闘い」だったとの視点が前面に出たが、それに対し「水と闘いすぎた」歴史だったのではないかとの声を聞いた。蒲原平野はかつて一帯が、清三郎の絵に出てくる湿地だった。湿地の水を「排水し」干上がらせて次々田んぼにした。では湿地は単に克服すべきものだったかと言えば、そうではない。湖沼における漁業の存在はもちろんだが、一帯が湿地であることで、新潟には豊かな内水面交通が発達していた。海の道、川の道とともに湖沼の道の結節点にあったことで、新潟は豊かな都市でありえたのだ。湿地の干拓、田園化は、都市としての新潟の衰退、無個性化とリンクしていた。清三郎の素描は希薄化していく新潟のその個性の最後の余韻を見つめていたのだとも思える。

「おいらん丸」追跡というエッセイで、洲之内徹は利根川、江戸川流域の関東の内水面交通の盛衰を追っている。晩年の10年洲之内の現代画廊で個展を続けた川北英司は、その利根川と周辺の湖沼の風景を坦々と描き続けた画家だった。清三郎の描いた新潟の周囲に川北の風景を置いてみると、かつての新潟が見えてくる気がする。川北の自画像が洲之内コレクションに入っているけれど、今回の新潟市美術館での「洲之内徹と現代画廊」展にはなぜか出品されていない。佐藤清三郎や川北英司、新潟の湖沼と内水面交通のことなど、時空を遡って洲之内徹と話したい。

(砂丘館館長・美術評論家)

 

<会期中の催し>

*会場はいずれも砂丘館ギャラリー(蔵)

 

 日本舞踊とギャラリートーク

4月26日(土)14:00~15:30 料金:500円 申し込み不要、直接会場へ

日本舞踊:小沢清子(佐藤清三郎長女)
*舞踊の後短時間ですが小沢さんが母の佐藤ナホさんから聞かれた清三郎のことを語っていただきます。

トーク:大倉宏(砂丘館館長)「洲之内徹と佐藤清三郎と新潟と」

 

 堀川久子ダンスパフォーマンス (川北英司展 会場にて) 

5月25日(日)15:00~16:00  料金:1,000円 申し込み不要、直接会場へ

ダンス:堀川久子(新潟市を拠点に国内外で、場と身体の関係に拘りつつ踊り続けているダンサー)

 

ギャラリートーク「川北英司の思い出」 

5月18日(日)11:00~12:00  料金:500円 申し込み不要、直接会場へ

トーク:川北嗣夫(川北英司長男)、聞き手:大倉宏

 

<同時期開催>

「洲之内徹と現代画廊―昭和を生きた目と精神―」

2014年4月12日(土)~6月8日(日)

9:30~18:00 休館日:月曜日(ただし4/28・5/5は開館)、5/7

会場:新潟市美術館(新潟市中央区西大畑町5191-9)

 

 

 

後期:川北英司展(会場風景)

 

 

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