明るい色 岡田清和/片桐翠/馬場まり子の画像

明るい色 岡田清和/片桐翠/馬場まり子

  • 開催期間:【終了しました】2019年11月2日(土)〜12月22日(日)
  • 開館時間:9時~21時
  • 定休日:月曜日(11/4は開館)、11月5日、26日
  • 料金:観覧無料
  • 主催:砂丘館 共催 はり絵作家岡田清和さんを支援する会

変わらない場所

大倉宏

 

馬場まり子の近作(2019年の絵)を見て、この、描かれたいろいろな人たちは、今を生きている、と同時に今ならざる時間をも生きていると感じた。彼らがまとう色、とりまく白い空間がどこか蛍光色にように発光して見えるのは、その異なる時間の方角からさしているように見える。

一人でいるのは 賑やかだ/賑やかな賑やかな 森だよ/夢がぱちぱち はぜてくる/よからぬ思いも 湧いてくる/エーデルワイスも 毒の茸も(茨木のり子「一人は賑やか」より)

そう、まるで、エーデルワイスと毒の茸が一緒に咲いている(ような)森から、それはさしてくる。

同じ、ではないが、どこか同種、あるいは近縁種に見えるような発光が、岡田清和の貼り絵や、片桐翠の絵にもある。「明るい絵」の明るいは、彼らの使う色の明度や彩度の高さだけを示すのではなく、その不思議な発光源が、彼らの色を実際の色以上に明るく感じさせる、それを言う。

友川かずきが2010年に作った「一人ぼっちは絵描きになる」で歌われる日本の画家ーー村山槐多、長谷川利行、中村彝、関根正二の色は美しいが、どこか暗く、黒く、重い。岡田清和の貼り絵は利行と同時代(昭和前期)に注目された山下清のそれを連想させるけれど、発色が、確実に違っている。ずっとおだやかだ。それは個性の違いであるのと同じくらい、二人が生きる時代の差でもあるような気がする。

槐多や利行の時代に描くこと、「一人ぼっち」で描く孤独は、おそらくもっと壮絶だった。そうならざるを得ない時代でもあった。山下清たち施設での生活者を取り巻く状況や、彼らを見つめる周囲の目も違っていた。

馬場も、片桐も、岡田も、槐多や利行や山下に比べるなら、もっと周囲の理解に恵まれている。

それは三人の個人的環境であると同時に、やはり、否応なしに時代も(少なからず)変わったのだ。

片桐の描く母、父、叔父、友人たちは彼女に、彼女の絵に、絵を描くことに柔らかい目を注いでいる。そのことを描き手も感じている。それでも、絵を描くことがどうしようもなく「一人ぼっち」であることは変わらない。そこから、彼女の色の不思議な(奇妙な、とも見える)、低地状の起伏がのびてゆく。

三人の絵の明るさは、そんな、黒さや重さをおそらく必要としなくなった、それでも変わらない、絵を描き、生き、「一人でいること」「一人ぼっち」の、現在位置を指しているように見える。

(砂丘館館長)

 

会期中の催し

1 ギャラリートーク

会場・主催 NSG美術館

馬場まり子 聞き手 大倉宏(砂丘館館長)

11月17日(日) 14:00〜15:00

無料(ただし「馬場まり子」展の入場券が必要)

 

2 ギャラリートーク

会場・主催 砂丘館

片桐翠 聞き手 大倉宏

12月7日(土) 14:00〜15:00 500円

 

3 貼り絵実演とギャラリートーク

会場・主催 砂丘館

岡田清和・にしき園生活支援員

12月15日(日) 14:00〜15:00 500円

主催 砂丘館

*いずれも申し込み不要、直接会場へ

 

<同時期開催>

明るい色 馬場まり子展

併設 岡田清和・片桐翠展

11/2(土)~12/22(日)10:30-18:00

休館日:月曜日(11/4は開館)、11/5

観覧料:300円(券売は17:30まで)

会場:NSG美術館

新潟市中央区西船見町5932-561

tel.025-378-3773

NSG美術館

 

作家プロフィール

岡田清和(おかだ きよかず)

1968年新井市生まれ。聴覚障がい、知的障がいを持つ。84年新潟県にしき学園(現在はにしき園、2010年より社会福祉法人上越福祉会に運営移管)に入所。88年夏休みから貼り絵を始める。96年「久比岐野・雪国からのメッセージ展」出品作が平山征夫新潟県知事に評価され、絵が県知事室に飾られる。98年画家原田泰治がにしき園を訪れ交流が始まる。99年二人を紹介するNHKのドキュメンタリー番組放映。2002年新潟県障害者芸術文化祭知事賞受賞。2000年・11年諏訪市原田泰治美術館、16NST本社夢メディア、17年南魚沼市池田記念美術館で個展開催。0214年作品集『彩りの詩』、19年『岡田清和物語』刊行。

片桐翠(かたぎり みどり)

1978年新潟市生まれ。99年青山学院女子短期大学英文科卒業。渡英。ウェストミンスター大学(ロンドン)で映画とイラストレーションを学ぶ。2006年創形美術学校造形科卒業。第1回パリ賞受賞。副賞でシテ・インターナショナル・デ・ザール(パリ)に8か月滞在。07年知足美術館、08・10・12・14・16年新潟絵屋、11・13年アートスペース88国立、14年新潟県立植物園などで個展。13年マレーシアArt Expo、14・15年枝香庵のクリスマス(ギャラリー枝香庵)に出品。17年ギャラリー枝香庵で個展。

馬場まり子(ばば まりこ)

1941年広島市生まれ。51年新潟市に転居。64年新潟大学英文学科卒業。73年より三条市に住む。菅木志雄とその作品に強い影響を受ける。61年最初の個展をかねこ・あーとGⅠ(東京)で開催(小麦粉その他によるインスタレーション)。同画廊で92年まで個展を続け、以降秋山画廊、コバヤシ画廊、巷房、藍画廊(いずれも東京)で個展を続ける。2004・06年「新潟の作家100人展」(新潟県立万代島美術館)、19年「あたらしいかたち 新潟県人作家展2019」(新潟市新津美術館)に出品。16年求龍堂より『馬場まり子画集 ピンク幻想』、19年『馬場まり子素描集 フツウの束の間』が刊行される。